20年超にわたって「会社四季報」を完全読破し続けている渡部清二さんに、「会社四季報」を使った銘柄探しをレクチャーしてもらうこの連載企画も10回目を迎えました。今回は、まだ株式市場ではあまり話題に上っていないものの、一気に注目度が高まる可能性を秘めたテーマをいち早く見つけ出すテクニックについて教わります。読みが当たれば、株価が急上昇する前にそのテーマに関連した銘柄をゲットできるわけです!
第9回「株価急騰を予感させる、「会社四季報」のキーワードとは」を読む
Step1.コメント欄でよく用いられているキーワードに注目!
たとえば「AI」とか「自動運転」とか、株式市場では特定のキーワードに注目が寄せられ、それに関連したビジネスと手掛けている会社に人気が集まることがよくあります。そのキーワードが株式市場の「テーマ」と呼ばれるものであり、注目度が高いものに関連している銘柄ほど、株価が上昇しやすくなります。
「会社四季報」のコメント欄に出てくる言葉で、よく見かける単語に注目するのが基本です。すべてのページをチェックするのが大変なら、パラパラめくるだけでも特定のキーワードが目に入ってくることに気づくでしょう。
「あちこちで見かけたな」というザックリとした印象で判断してもいいのですが、どれぐらい用いられているのかをきちんとチェックしたいなら、ウェブサービス「会社四季報ONLINE」の検索メニュー(有料)が便利です。よく目にしたキーワードを入力して検索を行えば、何件ヒットするか判明します。
いくつかキーワードを拾い出しておき、それぞれ検索を行ってヒット件数を見比べてみれば、どの単語の登場回数が特に多かったのかがわかるでしょう。このようなよく見かけるキーワードこそ、株式市場が特に注目しているテーマである可能性が高いと言えます。また、有料サイトを使わなくても、Google検索などを使って、そのキーワードとともに、「株式、テーマ」を入力して調べてみるのも1つの手です。そうすれば、関連情報がヒットするはずですから、株式市場でどれほど注目されているのかをつかめるでしょう。
Step2.コメント欄でチラホラ見かけ始めたキーワードに照準!
ただ、注意したいのは、検索で上位にランクインして登場回数の多いキーワードは株式市場で関心が高まりすぎていて、すでに株価もかなり上昇してしまっている可能性があることです。つまり、そのタイミングでは後追いになってしまう恐れがあるわけです。
そこで、まだ登場回数が少ないキーワードのほうにあえて目を向けるという作戦も考えられます。前号では用いられていなかったニューフェイスで、今号からチラホラ見かけるようになったというキーワードです。
いま関心が高まり始めているキーワードはこれ
次号で登場回数が増えていれば、そのキーワードに対して株式市場の関心が高まり始めていると判断できるでしょう。ここ最近の典型的な例として挙げられるのが「RPA(ロボテック・プロセス・オートメーション=ホワイトカラー業務の自動化)」というキーワードです。
2017年4集秋号(2017年9月14日発売)の時点では、3銘柄のコメント欄でしか用いられていませんでした。しかし、政府が「働き方改革」を推進していく中で株式市場においても注目され始め、2019年1集新春号では、61件の銘柄がヒットするまでになりました。
たとえば、RPAの関連銘柄の一つである「 コムチュア 」の株価は、2017年4集秋号が発売されてからわずか半年のうちに、株価が2倍になりました。また、2018年3月に上場したRPAソフトウェアを販売する「 RPAホールディングス 」は、公開価格3570円の4倍に達する1万4280円の初値をつけるなど注目が集まりました。
最近では「フリーランス」が挙げられます。会社という組織に属さず、自分の裁量でなにごともこなす、新しい働き方です。次号で登場回数が目立って増えていたら、人気に火がつき始めた可能性が高いと言えそうです。
このキーワードに関連する銘柄としては、コンサルタントなど専門家を企業に紹介・派遣する「 みらいワークス 」や、ネット上で求職者と求人企業とをマッチングする国内最大級のクラウドソーシング会社である「 クラウドワークス 」、クリエイター派遣などデジタル人材事業を手掛ける「 メンバーズ 」などが挙げられます。
最初から一つに絞り込まず、いくつかのニューフェイスのキーワードをチェックしておき、次号での登場回数の変化を観察してみるといいでしょう。そして、赤丸急上昇のキーワードに照準を合わせるわけです。
・「会社四季報」のコメント欄でよく用いられているキーワードは、株式市場で特に注目されているテーマと重なることが多い
・ただし、登場回数が最多のキーワードは、市場の関心が高まりすぎて、すでに株価がかなり高くなっているかも?
・これから人気を集めそうなテーマは、まだ登場回数が少ないニューフェイスのキーワードの中に潜んでいる
・「会社四季報」次号をチェックして、登場回数が急増しているニューフェイスは、株式市場の旬のテーマとなる可能性が!
今回のテーマで取り上げた上場企業
コムチュア
RPAホールディングス
みらいワークス
クラウドワークス
メンバーズ