投資で1億円以上の金融資産を築き上げることに成功した、通称「億り人」。投資家なら誰でも夢見る“億万長者”に、投資手法や持っている銘柄などを直撃取材! “億り人”願望満々のカエルくんが、根掘り葉掘りうかがいます。
資産バリュー投資が不人気な理由って?
お邪魔します! 「いつか億り人に!」を目標にしています。ぜひご指導をよろしくお願いいたします。かぶ1000さんが株を始めたのは中学生の時。40万円の元手から始めて――。
今は3億5000万円くらいですね。30年もかけているので、そこまでスゴい数字ではないと思います。35億円だったらスゴいんですけど(笑)。
30年で元手が……875倍ですよね。充分スゴいです! しかも2008年のリーマン・ショック以外は毎年、収益がプラスだと聞きました。その安定感の秘訣は?
ずばり資産バリュー投資ですね。
ただ、資産バリュー投資は歴史的に見てもパフォーマンスがいいと証明されている手法なのに、なぜか日本の投資家には不人気なんです(苦笑)。
なんでですか?
おそらく「みんなすぐに儲けたいとか、結果が出るまで長く待てない」ということが原因じゃないでしょうか。資産バリュー投資は結果が出るまで2年、3年とかかることもザラにあります。僕は中には7年間持ってる銘柄もあります(笑)。
わたしもすぐに値上がりする株を探したくなります。
でも、企業価値は1日、1週間で変わるものではないですよね。企業の価値を見極め、市場で割安に評価されている銘柄を買い、じっくりと値上がりを待つ――それが僕のスタンスなんです。
【ポイント1】株の期待リターンは7%! 長く相場に居続けることが大事
カエルくん、「益利回り」ってわかりますか?
1株当たりの利益を株価で割ったもので、PERの逆数ですよね!
そう! 日経平均のPERは13倍なので、日経平均の益利回りは約7.7%(=1/13)。
日経平均という企業に投資していれば毎年約7.7%の利益を稼いでくれるだろう、ということになります。
そんなに高いんですね!! なんか実感とちがいます……。
それは、見ている期間が短期間だったり、途中で相場から退場してしまうことが原因の一つだと思います。なので、僕は「相場に長く居続けること」を一番大事にしています。
なるほど! だからかぶ1000さんは「資産バリュー投資」という安定的な収益が期待できる手法を選んで、割安株を保有し、じっくりと値上がりを待っているのですね!!
【ポイント2】10万円入った財布が6万円で売られている状態!?
超お得な「ネットネット株」を探す!
かぶ1000さんはどうやって割安株を見つけるのですか? 割安の判断ってなかなか難しいですよね……。
「ネットネット株」という考え方があります。ネットネット株は例えるなら「10万円入った財布が6万円で売られている」ような状態なんです。
10万円の価値があるのに6万円で売られていたら、それだけで4万円の利益です。なんで、そんなことが起こるんですか?
不人気な業種だからとか、流動性がなく買いにくいとか、みんなが気がついていないとか、いろいろ理由があります。いつか、みんなが適正な価値に気がついて株価が上昇するだろうと考えるのが、ネットネット株投資なんです。
ぼんやり見えてきました!
かぶ1000さんの選ぶ銘柄【ネットネット株】
花王の株をたんまり持っている「昭栄薬品」
具体的な銘柄で説明しましょうか。僕は「 昭栄薬品 」を保有していますが、ここは資産の約40%(2018年3月時点、以下同)が花王の株なんです。ネットネット株かどうかを判断するのは、この式です。
会社のIR情報にある貸借対照表を見ながら、計算すればいいんですね。昭栄薬品だと正味流動資産は66億6904.4万円で、時価総額は41億円です!
現金及び預金2,003,788千円+受取手形及び売掛金7,203,172千円+投資有価証券7,196,062千円-貸倒引当金(流動資産)3,212千円-貸倒引当金(投資その他の資産)4,905千円-負債合計9,725,861千円=6,669,044(千円)
「正味流動資産>時価総額」なのでネットネット株ですよね。もし株を買った直後に会社を解散させたら、負債などを支払った後でも時価総額以上の資産が手元に残る計算です。
【ポイント3】資産バリュー株には株リッチ、不動産リッチ、現金リッチの3パターンがある!
資産バリュー株には大きく分けて3種類のパターンがあります。
② 不動産(含み資産)リッチな資産バリュー株
③ キャッシュ(現金)リッチなネットネット株
企業が持っている資産にもいろいろありますもんね。この違い、なにか投資に関係するのですか?
ざっくり言うと、「インフレか、デフレか」で有利、不利があります。日本は長い間、デフレに苦しめられていましたよね。デフレとは資産価値が下がっていく状態ですし、逆に資産価値が上がっていくのがインフレです。デフレだと③のキャッシュリッチな会社が強いですし、インフレなら①と②の株や不動産がリッチな会社に追い風となります。だから、インフレ、デフレを読みながら比重を変えたりします。
今はゆるやかにインフレが進んでいるので、株や不動産を持っている会社が注目なんですね!
かぶ1000さんの選ぶ銘柄【不動産リッチ株】
株主総会でじっくり話し込んで吟味した「光製作所」
ネットネットとは限りませんが、不動産リッチで割安な会社にも注目しています。その典型が「光製作所」。業務用・家庭用の家具の会社なんですが、売上の半分以上が不動産賃貸事業です。収益で見るとほとんどが不動産からの収益なんです。
ホームページを見ても、家具の会社にしか見えないのに……。
吉祥寺、大宮、横浜のセンター南などに商業ビルを持っていますし、その他にも積極的に不動産を取得しています。過去の有価証券報告書を見ると、新規に取得した物件が書いてあるので、それをずっとデータで残していますし、株主総会にも毎年出席しています。
持っている不動産については、有価証券報告書をみるといいのですね! 株主総会では、質問したりするんですか?
不動産賃貸部門を管理しているのは1人しかいないようなんです。だから総会後は担当の人とずっと雑談しています(笑)。
常連さんなんですね!
裏話かもしれないですが、急いで売りたい土地がある人にとって、光製作所が最後の駆け込み寺のような存在になっているそうなんです。資金繰りに困った人が売りに来る、と。
売り手は急いで売りたいから、安くカエル……。
かぶ1000さんの選ぶ銘柄【不動産リッチ株】
保有物件をグーグルアースで徹底調査して買った「ユニゾホールディングス」
不動産リッチな会社を探していると、手間取るのが物件の確認です。有価証券報告書に保有物件を記載していない会社もあるので……。「 ユニゾホールディングス 」のようにホームページに一覧で書いてあると便利ですね。
ユニゾのビジネスホテル、見たことがあります!
ユニゾホールディングスの株も持っています。着目したのは不動産。100棟以上のビルを持っていて、中にはアメリカの物件もあるんです。
アメリカの物件だと土地勘もないし、判断が難しそうですね。
そこで役立つのがグーグルアース。ホームページにある物件をグーグルアースで1棟ずつ、確認するんです。写真だと物件があるのがオフィス街なのか商業地なのかや、ビルの規模感もわかりますよね。そうやって1棟ずつ確認していく。そうすると「この立地なら入居者も集まりやすそうだ」とか、より確信度が増すんです。
ちなみに、日本の物件だと実際に見に行ったりもします。
そこまでするんですね……。
ユニゾは全部調べました。どこに不動産を持っているか、僕は必ず調べます。カエルくんが将来結婚する時、パートナーのことをなるべく多く見極めようとしますよね。パートナーの実家が大地主らしいとしても、それが北海道の原野なのか都内なのかで資産価値は大きく変わります。それと一緒で、どこの土地を持っているか、どこの銀行にどれだけお金を預けているかなど、銘柄選びの際には徹底して調べるんです。
わたしの結婚相手が決まったら調査してほしい……。
僕はそうやって調べるのが宝探しみたいで楽しいんですよ(笑)。それに不動産業界は潰れた会社がたくさんあります。過去に倒産した会社には、不動産や銀行、小売業、外食産業が多いんです。不動産業界はレバレッジの高い会社も多いので、そこまでやらないと安心して買えないんですよね。
かぶ1000さんの選ぶ銘柄【不動産リッチ株】
「ここがだめならしゃーない」と買った不動産優良株「三菱地所」
不動産はバブルだと心配する人もいるようです。
あくまでも僕の意見ですが、世界的に見ると東京の不動産価格にまだバブル感はありません。上海なんてありえないですよ。ワンルームでも7000万円すると聞きました。
ワンルームで!?
そう考えると銀座や丸の内が1坪8000万円の現状は、世界的に見ればバブルとはとても言えないですよね。もちろん日本全国の土地が上がるようなことはないと思いますが、東京や大阪の一等地はまだまだ評価される余地があると判断しています。だから、そうした一等地に土地を持っている銘柄は妙味があるかもしれないですよね。
不動産関連への期待、大きいんですね。
中でも期待して保有しているのが「 三菱地所 」。ここが上がらなければ、不動産に期待した自分が間違っていたとあきらめがつきます(笑)。
なぜそこまで?
都内の一等地中の一等地を持っているのは三菱地所。「丸の内の大家さん」と呼ばれるくらいですから、丸の内一帯の土地だけでも資産価値は相当高く、保有する賃貸不動産の含み益は3兆4000億円を超え上場企業トップです。三菱地所が上がらなければ、「しゃーないやろ」と(笑)。
かぶ1000さんの選ぶ銘柄【不動産リッチ株】
難波、千住に広大な土地を持つコラーゲン会社「ニッピ」
東京以外の不動産に注目して保有されている銘柄もあるんですか?
「 ニッピ 」は大阪に約9000平米の土地を持っています。難波駅すぐのなんばパークスの隣の一等地です。足立区で約12万平米の「ポンテグランデTOKYO」という大規模な再開発事業が進行中です。本業はコラーゲンやゼラチンを作っている会社ですが、これらの土地を勘案すると株価はものすごく割安だと判断しています。
東京以外の不動産についても目を配っているのですね! さすがです……!
かぶ1000さんの安定収益の秘訣である割安株をみつける方法がわかりました。
教えてもらった6つのポイントで、今後は決算短信や不動産情報をチェックしていきたいと思います!
長く相場に居続けることが大事
②安定収益の秘訣は資産バリュー投資
企業の価値を見極め、市場で割安に評価されている銘柄を買い、じっくりと値上がりを待つ
③「10万円入った財布が6万円で売られている」状態の株(ネットネット株)を探す
決算資料をもとに計算し、「正味流動資産>時価総額」となるネットネット株を探す
④資産バリュー株は株リッチ、現金リッチ、不動産リッチの3パターン
インフレかデフレかで、「○リッチ」に投資するか判断する
⑤不動産リッチ株を見極めるには有価証券報告書をチェック
⑥不動産の本質的価値は、実際に足を運んだり、グーグルアースを使って見極める
はい! ポイントは短期的な目線に囚われずに、本質的価値を見極めることです。
次回は、「かぶ1000流・超優良株」をみつける新たな投資基準についてお話ししますね。
今回のテーマで取り上げた上場企業
昭栄薬品
光製作所
ユニゾホールディングス
三菱地所
ニッピ