「PERで読み解く大塚ホールディングス」を読む
今年も残り1ヵ月半。今年のNISA口座枠が余っている人は、何を買っておこうかと考え始める頃ではないでしょうか。そんな時こそ投資指標の基本であるPERをチェックして、買いたい銘柄を探してみましょう。PERは株価を1株あたり利益(EPS)で割ることで計算でき、一般的には10倍、15倍というように倍率で表され、倍率が高くなれば割高、低くなれば割安と判断します。
(もしくは、時価総額÷当期純利益)
主力製品のコストと販売価格を考える
前回の「 大塚ホールディングス 」では、主力製品の交代局面において業績が変化し、PERに影響を与えるケースをみてきました。ただ、主力製品の売り上げそのものは変わらなくても、事業環境の変化がPERに影響を与えることがあります。そこで今回は、製造するためのコストや販売価格が変わってしまうことで、業績や株価にインパクトを与えるケースをご紹介します。
case15:クボタ
今回取り上げるのは、トラクターや田植え機など農業機械を手掛ける「 クボタ 」です。世界110ヵ国以上で販売実績を持ち、代表的な製品であるトラクターは世界で累計400万台以上を販売しています。また、農業に欠かせない「水」に関する事業も展開。水道管やポンプ、水処理システムなどを手掛け、農業を多面的にサポートしています。
PERに割高感はない
2017年12月期は増収営業増益となっており、今期も増収営業増益が予想されているなど好調な業績が続いている同社。しかし、予想PERは業種平均程度にとどまっており、過去の平均よりも低い水準に落ち込んでいます(いずれも東洋経済予想ベース)。
コストの上昇が逆風に
PERが過去平均よりも低くなっている理由の1つに「コストの上昇」が挙げられます。同社の主力製品であるトラクターに欠かせない鋼材の価格が上昇しているのです。これは、世界的にインフラ投資が増加していることや、鉄鋼に対する関税が引き上げられていることなどが背景にあります。景気が良いことの証拠でもあるのですが、鋼材を加工して販売する企業にとっては逆風となっており、クボタの株価やPERを押し下げているとみられます。
また、米国における金利上昇も逆風の1つとなっています。一般的に、代理店がトラクターなどを販売する際に、ユーザーに買ってもらいやすくするため、ローン金利の一部をメーカーからの奨励金でカバーすることがあります。そんな中、最近の金利上昇に伴い、ローン金利も上昇しているため、クボタ側の奨励金の負担が大きくなっているとのこと。これも「コストの上昇」として、収益をやや圧迫しているようです。
値上げ実現で収益アップ!?
ただ、明るい話も出てきています。弊社アナリストによれば、 需要が見込めるトラクターなどについて、同社は2019年から値上げを検討しているとのことです。コストを販売価格に反映することで、収益性がアップし、株価やPERも切り上がる可能性があります。今後の会社からの発表などに注目したいところですね。
①これからの業績を考える
②会社の人気度を考える
③投資家の心理を考える
今回は、①からクボタのPERをみてきました。主力製品の販売動向だけでなく、その製品にかかるコストや販売価格そのものも、企業の業績全体に大きく関わってきます。特に製造業の場合は、原材料の価格動向をめぐるニュースなどもチェックして、将来の業績やPERをイメージするようにしてみてはいかがでしょうか。