第8回 テンバガーは、バリューで買って成長ストーリーで売れ

四季報ひとすじ20年! 達人が教える活用のススメ/ 渡部 清二日興フロッギー編集部

「会社四季報」を使った銘柄探しの実践編の第1弾では、テンバガー(株価が10倍以上になる銘柄)をいち早く探し出す方法について、レクチャーしてもらってきました。テンバガーになりそうな4つの条件を満たす銘柄を見つけたら、あとはそれをいつ買って、いつ売るのかの判断が大切になってきます。今回は、そのタイミングの計り方についてレクチャーしてもらいましょう。
第7回 四季報から見定めるテンバガー発掘4つの条件【フレッシュ&オーナー企業編】を読む

買いタイミングの条件:割高感がない

ーーテンバガーになった銘柄の共通点は、もうバッチリ覚えました。①過去4年間で売上高が4倍以上、②売上高営業利益率が10%以上、③オーナー企業、④上場から5年以内ーーという4つですね。

その通りです。要は、オーナー社長が強いリーダーシップで積極経営を行っていて、売上がすごい勢いで増えていて、利益が占める割合も高くて大いに儲かっているフレッシュな会社だということです。ただ、4つの条件をすべて満たしていたら、無条件で買ってもいいという話ではありません。

急ピッチで成長していることが他の多くの投資家にも知られていると、すでに株価が高くなっていることもあるからです。まずは、その会社が稼ぐ利益と比べて株価が割安か割高かを示すPER(株価収益率)などの指標で確認してみることが大事です。

PER=株価÷1株あたり利益(EPS)
(もしくは、時価総額÷当期純利益)

その銘柄における過去5年間の平均PERと比べてみるなどして、もしも割高気味だと思えた場合は、“押し目買い”のタイミングを待つという手が考えられるでしょう。“押し目買い”とは、上昇トレンドの途中で一時的に株価が少し下げたタイミングで買い注文を入れることです。

株価はけっして一本調子では上昇せず、トレンドが続いていても、小刻みにジグザクの波を描いていくもの。そういった動きに目をつけて、少しでも安く買うようにするわけです。

売りタイミングの条件:成長ストーリーの崩れ

ーーでは、売り時のタイミングはどうやって判断すればいいのでしょうか? 必ずテンバガーになると約束されているわけじゃないですし、ずっと持ち続けるのはなかなか勇気が必要な気もしますが……。

テンバガー候補を絞り込む際に注目した4つの共通点のうち、「④上場から5年以内」を除く3つに変化が見られない限りは、ずっと持ち続けても良いと思います。なぜなら、高いレベルの成長が続いているわけですから。

逆に、いずれかに変化が生じたら、注意信号が点滅したと思ったほうが良さそうです。たとえば、売上の伸びが鈍ったり、利益率が悪化したりしたら、成長ストーリーが崩れ始めている可能性がありますし、会社のオーナーが交代すれば経営の方針も大きく変わってしまうかもしれません。

とにかく、3つの共通点のいずれかに変化が見られたら、いったん売って様子を見るのが一考でしょう。そして、再び成長を確認できるようになったら買い直せばいいですし、悪い予感が当たって成長に急ブレーキがかかったら、一旦売却し損益を確定させ、別のテンバガー候補探しを検討すればいいのです。

複数の単元で買っておき、一部を利益確定させるのも手

ーーただ、最近は「○△ショック」とか呼ばれる市場全体の急落がよく起きるので、そういったことに巻き込まれるのがちょっと不安です。それまで順調にテンバガーの道を歩んでいたとしたとしたら、とても悔しい思いをしそうですね。

資金に余裕があるなら、1単元だけ買うのではなく、複数の単元で買うというのが一つの手ですね。そして、株価の上昇が続いてきたところで、そのうちのいくつかを売って利益を確定させてから、残りをずっと持ち続ければ、ショック的な相場全体の急落が発生しても、ガマンできるのではないでしょうか?

もしも、そこまで資金に余裕がなければ、いったん売って利益を確定させたうえで再び同じ会社を買い直すという行動を繰り返していくのも一考です。そうすれば、利益を着実に積み上げていけますし、ショックが発生した場面で資金を避難させることも可能です。

さて、「会社四季報」を活用したテンバガー探しのレッスンも、これでついに終わりです。次回からは、「会社四季報」ならではのキーワードに注目した株価急上昇銘柄の探し方をご紹介しますので、どうかお楽しみに!

<まとめ>
・株価が10倍になった銘柄には、①増収率が高い、②売上高営業利益率が10%以上、③オーナー企業、④上場から5年以内ーーという4つの共通点がある
・4つの共通点をすべて満たしていても、株価が割高でないことを確かめたうえで買い注文を入れることが大切
・成長ストーリーが続いている限り、ずっと持ち続けてOK。ただし、少しでも陰りが生じたら、いったん売るのが無難