「会社四季報」活用の達人である渡部清二さん。そんな渡部さんから、テンバガー(株価が10倍以上になる銘柄)を見つけ出す方法を教えてもらうのが第5回から始まった実践編です。前回は多くのテンバガーに共通する4つの条件のうち、業績に関する2つの条件について詳しく説明してもらいました。今回は残る2つの条件にフォーカスを当てて、渡部さんに解説してもらいます。
第6回「四季報から見定めるテンバガー発掘4つの条件【急成長企業編】」を読む
売上急増中で利益率の高い企業が2つの条件をクリア
これまでに株価が10倍以上になった銘柄に共通していた4つのポイントとは、①増収率が高い、②売上高営業利益率が10%以上、③オーナー企業、④上場から5年以内ーーというものです。まとめると、上場してからまだ年数がそれほど経っていないオーナー企業で、業績が急ピッチで伸びているところがテンバガーになりやすいということです。
前回は業績面の条件である①と②についてみてきましたので、今回は③オーナー企業と④上場から5年以内という条件がどんなことを意味しているのかについてみていくことにしましょう。
ステップ1 「創業社長によるワンマン経営」に注目!
その創業者や家族が大株主となって経営している会社のことです。いわゆるワンマン経営で、自分勝手なことばかりをやっているという意味合いではなく、創業社長や創業家が強いリーダーシップを発揮している会社を指しています。
もちろん、ワンマン経営であると、その下で働いている従業員の間で不満が募る恐れも出てきます。しかし、社長の判断が正しくて業績がどんどん伸びていけば、待遇もよくなり、従業員のヤル気も高まりそうです。
また、ワンマン経営の場合はビジネスに対する判断も早くなりやすく、そうなるとちょっとした状況の変化にもすぐ対応できます。「取締役会で慎重に話しあったうえで……」などといったプロセスが必要な大企業よりも軽快なフットワークが期待できるのです。
社長が強いリーダーシップで会社を率いている一例として挙げられるのが「 ZOZO 」(旧社名:スタートトゥデイ)でしょう。前澤友作社長の派手な言動が注目されがちですが、この会社がネット上で運営するショッピングモールのおかげで、スマホで手軽に有名ブランドのファッションを購入できるようになりました。その結果、業績を大きく伸ばし、株価も2013年頃と比べて10倍以上に上昇しています。
中央上部のD欄に主な株主とその会社の役員の名前が出ています。社長はもちろん、その人物と同姓の人が大株主に名を連ねていたりすれば、オーナー企業の可能性が極めて高いでしょう。
ステップ2 育ち盛りの会社であることを確認!
上場してから年数がさほど経っていないということは、まだ社歴の浅いフレッシュな会社であるケースが多いと考えられます。社歴はそれなりにあるものの、上場したのはわりと最近という会社の場合も、大きなステップアップを図ろうとしている可能性が考えられます。
証券取引所に上場する目的とは、より多くの人に自分の会社の株式を買ってもらうことで、ビジネスのための資金を集めるためです。つまり、上場して間もない会社は手に入れた資金を用いて、売上や利益をさらに伸ばすことに力を入れる可能性が高いのです。
会社も人間と同じように、生まれた直後はとてもか弱い存在ですが、どんどん成長が加速していくものです。そして、成熟するにつれて成長のスピートが緩やかになり、新しいビジネスなどにチャレンジしなければ、やがて業績の伸びは頭打ちとなりがちです。
なお、株式市場への上場や会社設立の時期については、「会社四季報」誌面右端のA欄に出ているので、そちらを確認すればすぐにわかります。
4つの条件を満たす19銘柄
前回と今回の2回にわたって、多くのテンバガー銘柄に共通する4つの条件について詳しく見てきました。そこで、4つの条件に合致する銘柄をスクリーニングしたところ、なんと19銘柄にまで絞り込むことができました。
伸び盛りの会社が満載!
「 ジャパンインベストメントアドバイザー 」や、「 アカツキ 」、「 ストライク 」は前回の一覧表でご紹介しました。そこで今回初めて登場する銘柄をいくつかご紹介しましょう。
ジャパンインベストメントアドバイザーやアカツキに次ぐ増収率を遂げているのが、「 弁護士ドットコム 」です。同社は、Web上での弁護士・税理士の営業サポートと、一般会員向けの法律・税務相談サイトの運営が業務の柱となっています。特に相談サイトである「弁護士ドットコム」は、2018年5月に訪問者数が過去最高の1320万人に達しました。また、有料会員数も右肩上がりで、14万人を突破しているとのことです。いままさに伸び盛りの会社と言えそうですね。
もう1社、皆さんに馴染みがありそうな企業としては、「 オープンドア 」が挙げられます。同社は、「トラベルコちゃん」のCMでおなじみの旅行情報サイトを運営する会社です。認知率の向上や、ユーザー要望の強かった空席表示などを拡大することで、収益率を改善させています。また、外国人旅行者向けに、外国語サイトを拡大中とのことで、今後が楽しみな会社と言えそうです。
投資タイミングも大切
ただし注意してほしいことがあります。今回のスクリーニングで選び出された銘柄の中から株価が大幅な上昇を遂げる銘柄が現れたとしても、必ず10倍以上になるとは限りません。一方で、10倍どころでは上昇が止まらない可能性もありえます。言い換えれば、テンバガーは買うタイミングとともに売るタイミングの判断も簡単ではないということです。
そこで、次回はテンバガーの売買タイミングをつかむコツについて解説することにしましょう。そのヒントとなる言葉は、「変化に注目せよ!」です。どうか、次回をお楽しみに!
・株価が10倍になった銘柄には4つの共通点があった
・共通点とは、①増収率が高い、②売上高営業利益率が10%以上、③オーナー企業、④上場から5年以内
・創業社長によるワンマン経営で、社歴もまだ浅い育ち盛りの会社がテンバガーになりやすい
・10月12日時点で、4つの条件をすべて満たす銘柄をスクリーニングすると、19社がピックアップされた
今回のテーマで取り上げた上場企業
ZOZO
ジャパンインベストメントアドバイザー
アカツキ
ストライク
弁護士ドットコム
オープンドア