アジアの需要拡大の恩恵を受ける企業や、人手不足を追い風にする企業など、今の社会状況をもとに旬な銘柄を選定する「日興ストラテジー・セレクション」。9月号では、ピアノや管楽器でおなじみの「ヤマハ」が新しく加わりました! ヤマハの投資ポイントをチェックして、これからの投資候補にしてみましょう。
世界40ヵ国以上で活躍するヤマハ
「
ヤマハ
」は世界首位の総合楽器メーカーで、いまや海外売上が約7割を占めるグローバルメーカーです。同社の強みは、1954年から始めた「ヤマハ音楽教室」を全国に展開することで、楽器ユーザーの生の声を活かした楽器作りをしてきたことです。国内のこうしたノウハウを活用し、いまでは世界40ヵ国以上の国・地域で音楽教室を展開。57万7000人以上の生徒が音楽を楽しんでいます。
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新興国の楽器ブームが追い風に
今のヤマハは、中国をはじめとした新興国の追い風が吹き始めています。
国内が減収となる一方で、中国の売上高は2018年4ー6月期には前年同期比+18%と大きく伸びています。背景には、中間所得層が子供を音楽教室へ通わせるようになり始めたことが挙げられます。「一億総中流」とうたわれた日本の1970〜80年代に、ピアノ教室が流行したのと同じ現象がいままさに中国で起きつつあるのです。今後20ー30年の大きなトレンドが始まった可能性があります。
ほかにも、中間所得層が増加しているインドやインドネシアで、2019年に工場の操業が開始されるとのこと。今後は、中国以外での収益アップにも期待が高まります。
14期ぶりに過去最高営業利益を更新
こうした海外マーケットの追い風を受けて、ヤマハは2018年3月期に14期ぶりに営業利益が過去最高益を更新。また、営業利益率は2ケタへと高まっており、同社が目指す「営業利益率20%」という高い目標も、徐々に現実味を帯びてきました。「ニッチ・専業・グローバル・高シェア企業」へと変身しつつあるヤマハ。今後の活躍が楽しみな企業の1つと言えそうです。
2018年4ー6月期決算は、セグメント別では「楽器」が前年同期比+23.5%営業増益と好調な滑り出し。会社計画を上回るペースで推移している模様です。
好決算も明暗分かれる
ヤマハを加え、9月の「日興ストラテジー・セレクション」は全部で21銘柄となりました。採用銘柄のうち、3月期決算企業は8月中旬ごろまでに4ー6月期決算発表を終え、その内容で株価は左右される結果となっています。
暑い夏はエアコン業者に追い風
8月末時点で株価が好調なのは、「 リクルートHD 」「 ダイキン工業 」「 ソニー 」「 TDK 」です。
「 リクルートHD 」は、4ー6月期決算としては過去最高益を更新しました。人手不足を受けて、企業の派遣社員の活用が加速しているほか、CMでもおなじみの求人情報サービス「Indeed」の売上が5割増えるなど、追い風が吹き続けていることが好感されているようです。
「 ダイキン工業 」は4ー6月期に中国や米国に加えて、インドネシアなど新興国でも売上が好調だったことが株価を押し上げました。また、国内でも猛暑の影響で7月のルームエアコン販売が前年同月比12.2%増と6ヵ月連続のプラスだったことも追い風になった模様です。
米中貿易戦争リスクが重石に
一方、株価が軟調に推移しているのは、「 日本M&Aセンター 」「 日本電産 」「 住友不動産 」「 セイノーHD 」「 共立メンテナンス 」です。
「 日本電産 」は、4ー6月期に純利益が前年同期比33%増の373億円となり、四半期ベースで実質的に過去最高を更新しました。ただ、米中貿易戦争に対する懸念がマーケットで広がっており、海外投資家を中心に売られやすい地合いになっているとみられます。8月20日に年初来安値をつけるなど、株価は下落していますが、ロボット関連部品のニーズは旺盛とのことで、株価底打ちを期待したいところです。
9月号では、「 日本ライフライン 」が除外されました。主力事業である除細動カテーテルなどは順調に推移していますが、新規製品の投入に伴うコストが利益を圧迫しており、想定外の追加費用の発生懸念を考慮したためです。
今回のテーマで取り上げた上場企業
ヤマハ
リクルートHD
ダイキン工業
ソニー
TDK
日本M&Aセンター
日本電産
住友不動産
セイノーHD
共立メンテナンス
日本ライフライン