「PERで読み解くファナック」を読む
PERとは、「Price Earnings Ratio」の略称で、日本語では「株価収益率」と言います。そのPERは株価を1株あたり利益(EPS)で割ることで計算でき、一般的には10倍、15倍というように倍率で表され、倍率が高くなれば割高、低くなれば割安と判断します。
(もしくは、時価総額÷当期純利益)
成長期待を支える「セグメント」をチェック!
1株あたり利益(EPS)が同じ企業でも、投資家が買いたいと思えるような「理由」がある企業のPERは高くなる傾向があります。特に、会社の狙い通りに成長が加速していることを投資家が実感できる局面では、今後の成長期待が高まりやすく、PERも高くなりやすいと言えます。会社によっては、四半期ごとに開示する決算発表の中で、「セグメント情報」として公開しており、セグメントごとの売上高や営業利益を確認することができます。
case8:資生堂
今回取り上げるのは、「マキアージュ」や「エリクシール」など数多くの化粧品を手掛ける「 資生堂 」です。最近では、中国を中心としたアジアの売上が好調となるなど、グローバルでの売上が伸び、全体の売上高は2017年度に1兆円の大台に達しました。
PERだけを見れば割高感あるも
8月27日時点では、実績PERが136.6倍、予想PER(東洋経済予想)が46.4倍です。予想PERが業種平均を大きく上回っていることから、一般的には割高感が感じられる水準と言えます。また、こうした割高感に加え、多くの投資家がリスクとして意識している米中貿易摩擦の問題も重なり、足元ではやや調整局面に入りつつあります。
中国・アジアが稼ぎ頭に!
ただ、業績は非常に好調です。特にここ数年力を入れていた中国やアジアパシフィック地域が、全体の収益を押し上げるようになってきています。売上高営業利益率を見ると、2015年は中国が-0.1%、2016年も3.1%と足を引っ張るような水準でした。しかし、2018年上期には中国が16.8%、アジアパシフィック地域が13.0%と稼ぎ頭に成長しつつあることがうかがえます。こうした高収益・高成長のセグメントを抱えていることが、高いPERを維持している1つの要因と言えそうです。
①これからの業績を考える
②会社の人気度を考える
③投資家の心理を考える
今回は①と③から資生堂を見てきました。一見、他社などと比べて高いPERだったとしても、高成長を遂げている事業やセグメントを抱えているかどうかをチェックすることで、決して割高とは言い切れないケースがあります。その会社の将来を担う、高成長分野があるかどうかを常にウォッチする習慣を身につけましょう。