節税&投資に使える知らなきゃソンする制度を、フロッギー編集部員・S子が税理士の五島先生に聞き込み中。前編では、老後資金を作る上で大前提となる“仕組み化”の考え方と、具体的なツールとしてiDeCo(個人型確定拠出年金)について解説してもらいました。
後編では、iDeCoに加え、同じく“節税+資産形成”の仕組みとして最近耳にすることが多い「NISA」の活用法についても深堀りしていきます。
節税するなら、ふるさと納税? iDeCo、それともNISA?【前編】を読む
iDeCoは積立額の上限ギリギリまで掛金を設定すべし
ゴシマ
iDeCoについては、運用時に毎月手数料が発生します。手数料の支払い先は国民年金基金連合会へ103円、そして信託銀行に64円。さらに加入する金融機関へ口座管理料として0円〜500円程度支払うことになります。この額は金融機関によって異なるので、気になる人はチェックしましょう。
S子
12月になって売上が確定してから、一括でドンと入金することはできないんですかね? そうすれば毎月かかる手数料も節約できるとか?
ゴシマ
例えば12月に1年分まとめて払うというのも可能ですが、そうすると、単月の相場の影響を受けやすくなりますよね。
また、前払いは不可なので、1月に1年分払うというのもNG。確かに、国民年金連合会に払う103円は、掛金額が0円の月はかからないので、手数料の節約にはなりますが、毎月定額以外の掛金設定にするには、事前に届け出が必要になります。手間がかかる割には、そう臨機応変にはいかないのが現実です。
S子
目先の小さなおトク感につられるなってわけですね。
ゴシマ
それよりも大事なポイントは、人によって積立額の上限が異なること。
会社に企業年金がない会社員と専業主婦・主夫で月2.3万円、公務員月1.2万円、自営業で月6.8万円になります。
自営業者が上限ギリギリまで掛けても、年間81.6万円、10年で800万円超程度。積立期間は60歳までと考えると、意外に貯まらないもんでしょ?
S子
うーん、老後豊かに暮らすための資金は1億円必要とか言われてますよね。iDeCoだけに頼るのはキビシそう。
ゴシマ
だから節税メリットを存分に活かす上でも、迷う前に早く始める。そして掛金は生活に支障がない程度に、なるべく多く設定するのがお勧めです。
S子
今日、帰ったら口座開設の手続きを早速せねば! 商品の選び方のコツについても知りたいんですが、ちなみにゴシマ先生は何に投資しているのか、参考までに教えてください。
ゴシマ
現在は掛金の半分を元本確保型の定期預金、残り半分を外国株式のパッシブ型に投資しています。
ココでiDeCoで運用できる商品についてもかる~く解説。大別すると元本確保型(定期預金・保険商品)と投資信託(投信)になり、投信は大きく分けて2種類、パッシブ型とアクティブ型があります。
パッシブ型は市場全体に分散投資をし、日経平均のような指数に連動する成績を目指すもの。値動きがわかりやすく、コストが低いのが特徴。
アクティブ型は、運用会社が独自に銘柄を組み合わせて市場平均を超えることを目指して運用されるもの。コストはパッシブ型に比べると高めで、成績は投信によってバラつきがあります。
投資対象は株、債券、リートなど。国内外の株、債券などにまとめて分散投資できるバランス型投信もありますがコストが高めになりがちなので、事前にチェックが肝心です。
金融商品は長期スパンでムリなく継続できるものをチョイス
S子
意外。半分は元本確保型なんですね。
ゴシマ
リーマン・ショックや東日本大震災、その他、金融危機の暴落を経て思うのは、何より大事なことは投資を継続すること。
だから長期スパンで、今後リーマン・ショックのような暴落が起きて投信が50%下落したとしても、半分を預金にしておけば全体の4分の3は残る。そこに税金で25%程度が還元されるとすれば、最低でも全体で元本を確保できるかなというザックリの目安で構成しています。
もちろん、もっとリスクを取れるならば、すべて投資信託にしてもいいでしょうし、私の場合は、他に日本株への投資もやっています。既に保有している投資商品とのバランスも考えて決めるのがいいでしょう。
S子
なるほどなるほど。これも組み合わせによる最適化というわけですね。
他におトクに節税しながら資産運用ができる仕組みとしては、「NISA」「つみたてNISA」があると思うんですが、こちらはどうでしょう?
ゴシマ
iDeCoと違って、途中で引き出しOKなので、60歳までに使用用途が決まっていて一定額を貯めたいという人にはいいかもしれません。
ただ“まとまった資金を作る仕組み”としては、iDeCoよりさらに上限額が低いのが難点。
非課税も運用益のみとなりますので、節税メリットもiDeCoよりは小さくなります。
S子
儲からないと意味がないということですね。
ゴシマ
また、iDeCoは、商品の買い換え、入れ替えが何度でも自由にできるのに対し、「NISA」「つみたてNISA」の場合は、銘柄の入れ替えのたびに非課税枠が減っていく点にも注意が必要です。
ここで、NISA、つみたてNISAの違いについての追加ポイント。
まず、運用期間と上限額については、NISAは年間120万円で原則的に5年まで。つみたてNISAは最長20年、上限額は40万円となります。
投資商品はNISAの方が自由度が高く、投信、ETF、個別株、リートもOK。積立だけでなく、一括投資も可能です。
NISAは株を始めるお試しツールとしてgood!
S子
積極的に売買して、利益を確定しようとすると使い勝手はややビミョーでしょうか。
ゴシマ
まさに使い方次第でしょう。
前編でも触れたようにどんな制度、商品にも必ず一長一短あります。
その観点ではNISAやつみたてNISAだけで、「コツコツ老後の資金を貯めましょう」というのはムリがある。
ただし、NISAの場合は個別株やリートにも投資OKなのが特徴。「多くの銘柄に分散投資したい」「短期売買したい」という人には不向きですが、ビギナーが株を始めるお試しツールとして活用するならばいいのでは?
上限額が決まっているので、“リスクを取り過ぎない”“やりすぎなくていい”と考えれば一つのメリットにもなりえます。
S子
ヘンに山っ気を出して全財産をつぎ込むようなことにならずに済むわけですね(笑)。
ゴシマ
そう。個人的には、来たるインフレに備える意味でも、投資で資産を増やしたいと考えるならば、若いうちに株をやったほうがいいというのが私の考えです。
もちろんソンをするリスクもありますが、若いうちならば本業で挽回が可能。だから現役世代は自分が働くのが一番確実に稼げる方法です。でも、歳をとってきたら動けなくなるかもしれない。
ならば、自分の代わりにお金に働いてもらうための練習を若いうちからしておくことが、人生100年時代に生きる上でのリスクヘッジにもなります。
S子
そのためのステップとして、NISAやつみたてNISAを活用するのもアリということですね。
会社を1つぐらい持つのが会社員のたしなみに!?
ゴシマ
あと、もう一つ、ちょっと話が変わりますが、S子さんが興味を持ちそうな究極の“仕組み”についても少しお話ししましょうか。
S子
えっ、ナニナニ? 教えてくださーい!
ゴシマ
会社という“器”を活用するやり方です。会社を作れば、前編でお話しした小規模企業共済も、S子さんだけでなく旦那さんを役員にして加入するということも可能。
法人化すると、赤字でも法人住民税の均等割税額が発生するなどのデメリットもありますが、生命保険や社宅の活用など、節税の範囲も広がります。
どうでしょう、“ふるさと納税”より、よっぽど有効なのでは(笑)?
S子
ほほう、そんな手もあるんですね! 今は会社員でも副業が認められるようになってきていますよね。じゃあ副業で会社を作るのもアリ?
ゴシマ
そうですね。会社設立も最初の手間はかかりますが、作ってしまえばいろんな展開が考えられますよ。
S子
いずれ会社員も会社を1つぐらい持っておこう、という時代が来るかもしれないですね。そうなると「給料が低い」「年金が減っていく」なんて国や会社への不満をくすぶらせている場合じゃないですね。
ゴシマ
iDeCoなどの優遇制度を始め、会社員、自営業を問わず資産を増やす選択肢は確実に増えています。
だから、一つの方法だけに頼らず、総力戦でやれることを全部やる。そしてスピード勝負でなるべく早く仕組みを作ることが大事なのです。
S子
まだまだやれることがたくさんあると思うと、ワクワクしてきました。まずはiDeCoをなるべく早く始めて、次の目標は法人化! また色々と相談させてください。
・NISA、つみたてNISAは、株式投資をはじめるきっかけに適している
・資産を増やす選択肢は増えている。1つだけではなく、使える優遇制度は”全部”使おう!
・老後に備え、「自分の代わりにお金に働いてもらう」仕組みを作る。運用は「時間が味方」になるので、今すぐ取り組んでみよう
実際の取引等をご検討の際には、今後の制度改正等にも十分ご留意ください。