「PERで読み解くソフトバンク」を読む
「証券社員に対するアンケート」で、『投資初心者にオススメしたい投資指標』として1番に挙げられたPER。そのPERは株価を1株あたり利益(EPS)で割ることで計算でき、一般的には10倍、15倍というように倍率で表され、倍率が高くなれば割高、低くなれば割安と判断します。
(もしくは、時価総額÷当期純利益)
好決算でもPERが上がらないケースも
企業の業績が好調であることが伝われば、株価が上昇し、PERも上昇していくことが一般的です。しかし、前回のソフトバンクと同様に、将来の業績に対する一抹の不安などが投資家心理を冷やすようなケースでは、好決算でもPERがほとんど上がらないこともあります。
case6:任天堂
今回取り上げるのは、個性的なキャラクターやNintendo Switchなどでおなじみの「 任天堂 」です。1889年に花札メーカーとして創業した同社は、1983年の「ファミリーコンピュータ」が大ヒットし、家庭用ゲーム機の世界的メーカーとなりました。最近では、2017年発売のNintendo Switch関連の売れ行きが好調なことから、2018年4-6月期の営業利益は305億円と前年同期比88%増となっています。
投資家が気になるWiiとの比較
しかし、こんな好決算が発表されているにもかかわらず、株価は足踏み状態で、PERも業種平均を少し上回るぐらいにとどまっています。Nintendo Switchの発表から株価は2倍近く上昇していることから、好業績が株価にすでに「織り込まれている」とも言えますが、過去のWiiの販売と比較すると実は必ずしも絶好調とは言いきれないとも考えられます。
ハードの販売遅れは将来の収益不安へ
任天堂の資料によると、Nintendo Switchの2018年度想定販売台数は2000万台。昨年度よりも加速する想定です。ただ、実際には2018年4-6月期に188万台と前年同期と比べて早くも減速してきています。Wiiの販売台数の経年推移と比較すると、販売から2-3年目に加速することを期待したいところですが、そうはなっていないのが現状です。ハードの売上は将来のソフト販売にも直結しますので、足元の減速感がこれからの業績期待を押し下げている可能性があります。
看板商品の売れ行きをチェック
ただ、2018年9月からオンライン機能を拡充する有料サービス「Nintendo Switch Online」を開始する予定であることや、人気作である「大乱闘スマッシュブラザーズ」を2018年内に発売予定であることなどから、これからハードの販売が加速することも考えられます。決算で足元の利益をチェックするとともに、こうした看板商品の売れ行きなどもチェックしながらPERを考えるようにしましょう。
①これからの業績を考える
②会社の人気度を考える
③投資家の心理を考える
今回は①を中心に任天堂を見てきました。決算が好調でも株価やPERがあまり上昇しない場合は、主力製品の販売状況をチェックしたり、過去の製品の販売との比較をしてみることも検討しましょう。