SMBC日興証券がいまの相場環境を加味し、選定した銘柄を紹介する「日興ストラテジー・セレクション」。今回は、その中から「世界を支える日本の製造業」を紹介します。
IoTやAIなど世界の製造業を取り巻く環境が激変しているいま。自動車業界や家電業界などで、これまでの概念をがらりと変えるような製品が投入されています。その製品づくりを支えているのが日本の製造業です。モータや車内配線装置、無段変速機などの車載用部品を筆頭に、世界シェアトップ企業がたくさんあります。数ある企業の中から選りすぐりの6銘柄を見ていきましょう。
第1回「マーケットはアジア全域! インバウンド・アジア消費関連企業たち」を読む
最高益更新中! モータのニーズ増加で「大波」到来【日本電産】
スマートフォンや自動車など、身近にある様々な製品に必要なモータを開発する「 日本電産 」。過去に世界的なパソコン普及の大波に乗り、HDD用スピンドルモータ(ディスクを回転させるためのモータ)で世界首位を誇る同社ですが、これを上回る大波がいままさに訪れています。
ブレーキや座席移動などの車内の装置でモータが使われ、「クルマの電装化」が進んでいます。またモータがエンジンに替わる電気自動車が普及すると、さらに電装化が進む可能性があります。こうしたモータの需要拡大により、すでに2018年3月期では、売上高、営業利益、税引前利益、当期利益の全項目において過去最高を更新。現在、30%と世界シェアNo.1の地位にある電動パワステ用モータ(ハンドルを回す力を補助するモータ)の需要が2020年度には50%程度まで高まる予想(同社予測)です。
「クルマの電装化」と日本電産の活躍。Win-Winの関係になれるよう、応援したいですね。
イギリスやフランスでは、2040年までにガソリン車やディーゼル車の販売停止、電気自動車への転換を促す政策を発表。モータのニーズはさらに高まりそうです。
今後3年で営業利益は倍増へ【TDK】
テレビやスマートフォン、自動車まで、身の回りにある様々な製品の電子部品を手がける「 TDK 」。かつてはカセットテープやHDD(ハードディスクドライブ)の磁気部品で大躍進した同社ですが、いまは日本電産と同じように、「クルマの電装化」の追い風を受けています。
同社が得意とするのは、セラミックコンデンサ。コンデンサは電気を蓄えたり、放出することで電圧を安定させるほか、ノイズを取り除いたり必要な信号を取り出す部品です。同社の車載用コンデンサは世界でなんと4割ものシェアを握っており、クルマの電装化で使用箇所が多くなる中、大きな恩恵を受けています。さらには、センサー関連会社5社に2000億円もの投資を実行するなど、自動運転に欠かせないセンサー分野への投資も加速させています。
2020年度には売上高1兆6500億円、営業利益率10%以上を目標として掲げるTDK。これからも私たちの生活を便利にしてくれる「電子部品のデパート」として、一層の活躍が期待されます。
2018年3月期の営業利益は856億円だったため、3年で利益は倍増の計画。ハードルは高いですが、「クルマの電装化」関連として期待が高まります。
技術とM&Aでグローバル展開を拡大する【武蔵精密工業】
四輪および二輪車向け部品の開発・製造・販売を行っている「 武蔵精密工業 」。完成車メーカーがギアやシャフトといった車部品の製造をアウトソーシングする動きもあって、世界シェアを拡大しています。
ユーザーが完成車に求める要素の1つに燃費向上がありますが、そのためには各パーツの軽量化が求められます。同社の差動装置「デファレンシャルアッセンブリィ」はなんと手のひらサイズながら、1トンを超える車をも動かす高い強度と耐久性! 小型化・軽量化で世界最高水準を誇り、ほとんどの車種にあう商品揃えです。
燃費向上はどの完成車メーカーにとっても共通の課題。独自の技術でこれからも世界でニーズが高まる会社と言えそうですね。
現在、世界の5つの地域に生産・販売拠点を持つ同社。2016年6月には欧州最大の鍛造・機械加工メーカー、HAYグループを買収し、ますますグローバル展開を拡大しています。
新たな可能性秘めるVRで、王者の強みを再出【ソニー】
トランジスタラジオやウォークマンの開発で世界に躍り出た「 ソニー 」。1990年代後半以降からの長い低迷期を乗り越え、最近では構造改革で復活に成功。過去に成し得なかった持続的高収益企業を目指しています。
その成長ドライバーとなるのがゲーム&ネットワークサービス分野です。「PlayStation™Network」は年間売上が1兆円、月間アクティブユーザー数が8000万を超える成長っぷり! また、VRヘッドセットをかぶると迫力ある3D空間がプレイヤーを360度取り囲む「プレイステーション ヴィーアール(VR)」にも期待が高まります。圧倒的な臨場感で「プレイステーション4」の魅力をさらに高めるVRは全世界で価格が改定され、ユーザーが買いやすくなったのも嬉しいニュースですね。
当社アナリストは、2022年3月期に営業利益1兆円に達すると予想。国内電機メーカーが達成したことのない利益水準に到達することが見込まれます。
ASEANの売上が大幅アップ! 魅力あるラベルを作る【フジシールインターナショナル】
「包んで価値を、日々新たな心で創造します」を経営理念に、飲料、食品、日用品、医薬品などの各分野で魅力あるパッケージを提供する「 フジシールインターナショナル 」。
なかでもフィルムの裏面に絵柄や文字を印刷し、熱をかけることで容器の形状に合わせてラベルをフィットさせるシュリンクラベルは同社が世界に先駆けて開発。パイオニア企業として、2018年3月現在国内シェア60%で業界トップです。
業績面でも好調です。2018年3月期は国内、海外ともに売上高を伸ばし、全世界で1547億円(前期比9.0%増)となりました。なかでもASEAN地域では前期比34%増と大幅アップ!
どんな形状のボトルでもぴったりフィットするラベル。消費者へのメッセンジャーとして世界中のメーカーから引っ張りだこです。日常のなかでも知らないうちに、同社の製品を手にしているかもしれませんね。
新中期経営計画では、2020年3月期に売上高1800億円を掲げました。赤字だった欧州部門も黒字化し始めており、着実に利益を伸ばしていきそうです。
5期連続で最高益。150ヵ国以上の空気を変える企業【ダイキン工業】
2010年度からエアコン世界首位に立つ「 ダイキン工業 」は自他共に認める空調のスペシャリスト。世界各地に90以上の生産拠点を構え、150以上の国できめ細かく空調ニーズに応えています。
2018年3月期決算では、なんと8期連続での増収増益、5期連続で最高益を更新! 空調・冷凍機事業では、売上高が初めて2兆円の大台を超えました。主力の空調事業では、米国の環境規制強化の影響で同社が得意な省エネタイプのニーズが拡大。また、高温・高湿でエアコンへの潜在ニーズが高いアジアでは、中間所得者層の増加とともに空調の普及拡大期に入りつつあります。
世界中の人々の毎日を快適にすることをミッションとして、「空気」にこだわり続けるダイキン。世界中をクールに冷しつつも、使命感に熱く燃えているようです!
アジア最大級の空調市場に成長しているベトナムで空調機の新工場が本格稼働。アジアでの売上高がいずれ国内を上回る可能性も考えられます。
日本の製造業に大きなビジネスチャンスが待っている?!
IoTや自動運転といった最先端のテクノロジーに欠かせないだけでなく、世界中の人々の生活を支える日本の製造業。イノベーションを生み出す研究開発力や洗練された製造プロセスを持つ日本の製造業には大きなビジネスチャンスが待ち受けています。日興ストラテジー・セレクションでは、こうした世界を支える日本企業に引き続き注目していきます。
今回のテーマで取り上げた上場企業
日本電産
TDK
武蔵精密工業
ソニー
フジシールインターナショナル
ダイキン工業