いまマーケットで注目すべき企業をピックアップし、毎月ご紹介する「日興ストラテジー・セレクション」。今日から4回にわたって、全21銘柄をテーマごとにご紹介します。
2018年上半期の訪日外国人客が過去最高の1589万人を記録するなど、引き続きビジネスチャンスが拡大しているインバウンド関連。また、中国をはじめとするアジア諸国では、中間層を中心に、高品質で安心な日本ブランドのベビー用品やヘルスケア用品などの消費が伸びています。そこで今回は、アジア全域をマーケットと捉え、魅力的な日本の製品やサービスを手掛けるインバウンド消費・アジア消費関連企業を一挙にご紹介します!
「ドーミーイン」のインバウンド比率が急成長するワケ【共立メンテナンス】
ビジネスホテルやリゾートホテルのホテル事業、学生・社会人向け寮事業などを手がけている「 共立メンテナンス 」。なかでもビジネスホテル「ドーミーイン」は訪日外国人の利用が急増しています。
ドーミーインの人気の秘密は、外国人に嬉しい“おもてなし”にあります。ホテルの公式サイトは英語・中国語・韓国語に対応しているほか、ほとんどの施設にサウナ付きの大浴場とランドリーコーナーがあり、夜には無料ラーメンのサービスがあります。こうした魅力的なサービスが口コミなどで広がり、利用者の増加につながっています。
ドーミーイン事業の好調を受けて、同社は2018年3月期には6期連続で経常利益が過去最高を更新! 配当金も6期連続増配となりました。旅行者に嬉しいサービスいっぱいのホテルを運営する共立メンテナンス。訪日外国人増加の恩恵を受けやすい会社の一つと言えるでしょう。
ドーミーイン事業の稼働率は90%。これは競合と比較しても非常に高い水準で、注目に値するスコアです。新たに11棟のホテル建設も決定しており、安定した収益拡大が期待されます。
インバウンド増加がダイレクトに業績を底上げへ【日本空港ビルデング】
東京の空の玄関口として、国際線・国内線ともに多くのフライトが発着する羽田空港。その羽田空港のターミナルビルの運営をしているのが「 日本空港ビルデング 」です。
同社の事業はビル施設の建設・管理や、チェックインカウンターや事務室の賃貸にとどまりません。免税店やショップ運営などの販売業や、レストラン運営や機内食・空弁(そらべん)などの製造販売といった飲食業も展開しています。「都心に近い」「国内線への乗り継ぎに便利」「24時間オープン」といったメリットをいかし、空港利用者のニーズを取り込んでいます。
2018年3月期は訪日客が増えたために販売業の売上が伸び、営業利益は過去最高を更新しました。これからも旅行客の増加とともに成長が期待されます。
羽田空港の年間発着枠は現在の44.7万回から48.6万回へ増える計画。2019年3月期も営業最高益を更新することが見込まれています(会社予想)。
アジアで大人気! 最高益をけん引する「無印良品・MUJI」ブランド【良品計画】
「無印良品」は1980年に40品目からスタートし、いまや衣料品や家庭用品から食料品まで約7000アイテムに達しています。この「無印良品」の企画開発・製造から販売までを手がけているのが「 良品計画 」です。
同社が海外向けに展開するブランド「MUJI」は、ロゴも模様もないのが特徴です。収納力バツグンなバッグやポーチ、汚れがつきにくい撥水加工のコットンスニーカーなど、どれもシンプルでいて機能的な製品ばかり。日本だけでなく東アジアを中心とする海外でも大人気です。
業績も好調で、2018年2月期には営業利益ベースで7期連続増益となり、過去最高を更新しました。特に、中国をはじめとする東アジアでは、積極的な出店によって営業利益の37%を稼ぎ出しています。国内店舗でもインバウンドによる免税販売が好調。日本ブランドのグローバルな活躍が今後も楽しみです。
中期経営計画では、2020年度に営業収益5000億円、営業利益600億円を目指すとのこと。特に海外出店を強化する予定で、世界展開が加速しそうです。
「買いやすさ」の改善で客数急増【ドンキホーテホールディングス】
ディスカウントストア「ドン・キホーテ」を中核とする「 ドンキホーテホールディングス 」。ドン・キホーテは、免税対象商品が拡大された2014年10月以降、旗艦店を中心に免税カウンターを設置し、免税品を買いやすくなるようにしました。さらに、英語・中国語・韓国語・タイ語対応のホームページや24時間対応コールセンター、全店無料Wi-Fiや銀聯カード決済など、訪日外国人客、特にアジア人客にとって便利なサービスを展開してきました。
その企業努力が実り、2015年の爆買い期には10万人~20万人だったドン・キホーテの月間免税客数は、2018年1~3月には月間40万人を超えるまでになりました。
もともとアミューズメント性の高いディスカウント戦略が人気のドン・キホーテ。インバウンドの追い風が続く限り、まだまだ成長が期待できそうです。
2018年6月期は2ケタ増収増益となり、29期連続の増収営業増益を達成。好調なインバウンド分野が支えとなり、収益の柱となりつつあります。
売上の3割強を中国で稼ぎ出す【ピジョン】
赤ちゃんがママのおっぱいを飲むときの吸い方を研究し、哺乳びんの国内売上シェアNo.1となっているのが「 ピジョン 」です。
同社は哺乳びんでのノウハウをいかし、おしゃぶり型マグカップやベビー用食器、マタニティ用品など、ベビー・ママ向け用品を開発。高価格ながらも赤ちゃんの安全性を求めるピジョン商品は、中国でも人気で、2018年1月期では売上高の3割強が中国での売上となっています。
さらに、少子化が進む日本国内での売上高を支えているのが、実は約2割を占めるとされるインバウンド消費。赤ちゃんの健やかな成長を支えるピジョン商品は、国内でのインバウンド消費の増加、アジアでの消費の増加につながっています。
2018年2-4月期は営業利益が前年比2ケタ増益。セグメント利益では、中国事業が前年比19.5%増と全体をけん引する構図は変わっていません。
紙おむつ「メリーズ」がアジアで急成長中【花王】
ベビー用紙おむつの「メリーズ」、洗剤の「アタック」、スキンケアの「ビオレ」とおなじみのブランドを製造・販売している「 花王 」。特に、メリーズは国内のベビー用紙おむつ市場で11年連続1位を誇るだけでなく、EC(ネット販売)が好調だったことから、中国の乳幼児用紙おむつ市場でもトップシェアとなりました。さらに、中国以外のアジア諸国でも、2017年までの過去5年でシェアを約3倍にのばしています。
メリーズなどの海外売上がけん引役となって、2017年12月期には5期連続で営業利益が過去最高を更新し、配当金も28期連続増配となりました。さらに、花王は中国向けEC・越境EC(日本商品の直接販売)ビジネスやアジア向け化粧品事業を強化し、2018年度でも増収を目指しています。
2030年までに売上高2.5兆円、営業利益率17%を掲げる同社。営業利益は2017年12月期の2048億円から倍以上となる計算です。連続増配記録もまだまだ伸びそうです。
まだまだ拡大が期待できそうなインバウンド消費やアジア消費。日本の高品質なサービス・製品を武器に、海外のニーズをうまく取り込んでいる会社をぜひチェックしてみましょう。
今回のテーマで取り上げた上場企業
共立メンテナンス
日本空港ビルデング
良品計画
ドンキホーテホールディングス
ピジョン
花王