読破し続けて20年、「会社四季報」の達人・渡部清二さんに、四季報を読みこなすコツを教えてもらう本連載。「会社四季報」ならではと言える3つの強みについてうかがった前回に続き、今回は最低限チェックしておけばいい5つのポイントについてレクチャーしてもらいました。
第1回「誰でも「会社四季報」を深読みできる方法とは?」を読む
まずは巻頭3ページ目で全体像をチェックしておこう!
前回に引き続き、「会社四季報」の読み方の基本についてですね。何でも聞いてください。ただ、最初にアピールしておきたいのは、「絶対に3ページ目を見逃さないように!」というメッセージです。すぐに個別企業のページに目が向かって、巻頭付近のページを読み飛ばしている人は意外と少なくないようですから。ここには、「市場別決算業績集計表」が掲載されています。文字通り、市場ごとに売上高、営業利益、経常利益、純利益の前期実績、今期予想、来期予想が一覧になっているわけです。
要は、市場ごとに業績の平均値とその方向性がわかるのです。この欄を確認したうえで個別銘柄のページを見たほうが、相対的な比較がしやすくなります。「この欄は市場平均が書いてあるので、それを知れば市場を上回る増収増益なのか、市場を下回る増収増益なのかの判断がしやすくなる」などといった判断ができ、うっかり期待外れの銘柄を選んでしまうリスクが低くなります。
その通りです。たとえば、いわゆる急成長株は「市場別決算業績集計表」の新興市場の平均増収率をコンスタントに超える増収率を遂げているものです。当然ながら新興市場には育ち盛りの若い企業がたくさん集まっており、その平均的な売上高の伸びをつねに超えていれば、グングン成長していると判断して差し支えないでしょう。
「ABEJN」を見るだけで、買いたい銘柄は探せる
確かに、パッと見た限りでは、わかりづらいですね。「会社四季報」も巻頭ページにおいて、誌面A〜Nのブロックに分類したうえで、各項目について解説しています。とはいえ、これらすべてを個別銘柄ごとにくまなくチェックするのはかなり大変ですよね。
そこで、私は最低限チェックすべきブロックを5つに絞り込みました。それは、「A・B・E・J・N」です。名付けて「アベジャパン(A・B・E・J・N)。あくまで覚えやすさを狙ったものであり、他意はありません。これらを見ておくだけでも、投資のヒントが見つかるはずですよ!
その企業に関して知っておくべきことを、必要最低限の範囲でチェックできるからです。「A」には書いてあるのは、言わば「会社の自己紹介」で、何年生まれで、何をやっていて、どういう売り上げか、ということが書いてあります。「B」は「会社四季報」の取材記者によるコメントで、前半の【】が今期、後半の【】が中長期的な話です。簡単に言うと、「いまこんな状況で、将来こんなことを考えています」という自己紹介の続きを第三者(記者)が客観的に述べたものですね。つまり、「A」と「B」を見れば、どんな会社なのかが一目でわかるわけです。
そして、「E」では財務の健全性を把握できます。例えばこの欄の中の「キャッシュフロー」はお金のやりくりが書かれているので、個人で言えば、給料前に金欠で困っている人は、この欄が芳しくありません。「J」は損益計算書で、個人における年収と出費の収支みたいなものです。これらを見れば、経営が順調で大いに繁盛している会社を見つけられます。
最後の「N」には株価チャートの推移と、バリュエーション(業績の実績値や予想値と株価を比較した割安・割高度)が出ています。会社の“人となり”が今までの項目でわかってきた上で、市場が株価として実際どのように評価してきたのかを把握できます。
おっしゃる通りです。「A・B・E・J・N」欄を見れば、業績がいいのに株価がまだ割安な銘柄を見つけ出せます。とにかく、本来ならば私のように、「会社四季報」の隅から隅まですべて脳内にインプットしてしまうのが最強の投資家への近道なのですが、もっと大胆に端折ってしまえば、見逃してはならないのは「A・B・E・J・N」の5つに尽きます。これらをちゃんと見ているだけでも、投資の成果はガラリと変わってくるはずですよ!
・巻頭にある市場ごとの業績の平均値を確認すれば、期待外れの銘柄を選んでしまうリスクを低くすることができる
・A〜Nのうち、最低限押さえておくべきは「アベジャパン(A・B・E・J・N)」
・「A・B・E・J・N」欄を見れば、業績がいいのに株価がまだ割安な銘柄を見つけることができる