「PERで読み解くキーエンス」を読む
ニュースや新聞でよく見かける企業をPERから読み解いていく本連載。PERは多くの投資家が投資をする際に参考にする投資指標の1つで、株価を1株あたり利益(EPS)で割ることで計算できます。そして、一般的には10倍、15倍というように倍率で表され、倍率が高くなれば割高、低くなれば割安と判断します。
(もしくは、時価総額÷当期純利益)
一時的な利益押し下げ要因には注意
PERは上記の計算式にもあるように、売上からさまざまなコストなどを差し引いた「当期純利益」で計算されます。しかし、その利益にたどり着く間にある、一時的なコストも考慮されていることには注意が必要です。パッと見では割高に見える株も、実はそのときだけコストが多く見積もられ、最終利益が実態以上に押し下げられている(=PERが割高になっている)ケースがあるのです。
case4:イオン
今回は主婦の強い味方、「 イオン 」を取り上げます。イオンは日本国内とアジアに総合スーパーやモール型ショッピングセンターなど計2万1742もの店舗/ヵ所(2018年2月末時点)を展開しており、セブン&アイHDと並ぶ一大小売企業です。
「本業のもうけ」を示す営業利益をチェック!
イオンは2015年1月に、業績が低迷するダイエーを完全子会社化しました。その影響で2016年2月期以降、事業を再編するためのコストがかさみ、最終的な利益である当期純利益は低迷が続いています。それにより、予想PERは一時280倍まで急上昇したこともあったほどです。年間で稼ぐ当期純利益の280年分を見越した時価総額になってしまったと考えると、非常に割高な水準になったことがわかりますね。
一方、本業のもうけを表す営業利益は2018年2月期まで3期連続増益で、なんと過去最高益を更新しています。特に「イオン銀行」などを含む金融事業や、大規模な「イオンモール」を手掛けるディベロッパー事業が好調です。これらの事業はイオンの売上全体の1割程度に過ぎないですが、営業利益の半分以上を稼いでおり、スーパーマーケットなどとの相乗効果で収益の柱になりつつあることがうかがえます。
PER53倍でも割高とは言い切れないイオン株
このような本業の伸びや、個人投資家に人気の株主優待などを総合的に考えると、PERが高くても割高とは言い切れないことがわかります。むしろその事業再編コストがなくなる今後は、さらに利益が押し上げられていくとも考えられそうです。
①これからの業績を考える
②会社の人気度を考える
③投資家の心理を考える
今回はイオンを①を通して読み解いてきました。PERは割安・割高を判断するのに便利な指標ですが、「本業のもうけ」を示す営業利益も合わせてチェックすることで正しく読み解くことができます。「異常なほどPERが高いのはなぜ?」と思ったら、営業利益と当期純利益を過去数年分さかのぼったり、一時的なコストを企業が見積っていないかどうかを確認してみましょう。