PERで読み解くキーエンス

月曜日はPERをトコトン!/ 日興フロッギー編集部オノデラコージ

「PERで読み解くオリエンタルランド」を読む
有名企業をPERから読み解いていく本連載。PERは多くの投資家が投資をする際に参考にする投資指標の1つで、株価を1株あたり利益(EPS)で割ることで計算できます。そして、一般的には10倍、15倍というように倍率で表され、倍率が高くなれば割高、低くなれば割安と判断します。

PER=株価÷1株あたり利益(EPS)
(もしくは、時価総額÷当期純利益)

PERは時系列で比較するのも有効

前回のオリエンタルランドの例で見たように、マーケットにおける人気度が高い企業は買いたいと思っている投資家が多いので、株価が上昇しやすい傾向があります。その結果、PERの水準も高くなりやすくなります。このようなケースでは、人気の度合いが異なる他社や業種全体の平均と比較するより、過去のPERの水準と比べた方が、割高・割安を判断しやすい場合もあります。

case3:キーエンス

そこで今回は驚異の利益率を誇る「 キーエンス 」を取り上げます。同社は自動車や食品などを製造する工場で、ベルトコンベアなどで流れてくる製品の有無などを検知するセンサーを開発しています。最近では工場のFA(Factory Automation=工場の自動化)が進んでおり、同社が開発するセンサーのニーズが高まっています。

キーエンスはその利益率の高さとFA機器に対する期待などから、オリエンタルランドと同様に投資家に人気です。人気の理由は異なりますが、割高・割安を判断するには時系列での比較が有効的です。

PERは過去3年平均を下回ってきた

予想PERを見ると、業種平均よりもキーエンスが高いので割高であるように見えますが、過去の推移を見ると、2018年1月に46.2倍を付けて以降、下落しています。足元では過去3年間の平均である32.5倍を下回る水準まで低下し、むしろ割安感が意識される程度にまで下がってきました。

PERを低下させた2つの要因

直近で大きくPERが低下している理由は大きく2つ考えられます。1つはリスクを取りに行くことを控えようとする投資家心理です。2018年に入ってから、北朝鮮問題や、米中の通商問題など世界全体の景気を冷やしかねないリスク要因が相次ぎました。その結果、世界景気に左右されやすい業種のPERは低下しやすい環境にありました。世界中の工場にセンサーなどを供給するキーエンスも、世界景気に左右されやすい業種なので、一時的に売られてしまっていると考えられます。

もう1つの要因は、FA機器の成長率が鈍化するのではないかという懸念です。これまでは半導体工場のFA機器需要がとても強く、急激な成長を見せていましたが、その需要も短期的にはピークアウトしつつあります。

成長ストーリーに変わりはない

しかし、世界的な人手不足から、工場の自動化のニーズは引き続き根強いものがあると見られ、キーエンスにとって追い風が吹くストーリーには変わりありません。短期的には株価は下がりやすいかもしれませんが、再び上昇する可能性は十分にあると言えるのではないでしょうか。

<PERの読み解き方3ヵ条>
①これからの業績を考える
②会社の人気度を考える
③投資家の心理を考える

今回はキーエンスを①と③を通して読み解いてきました。投資家心理などから株価が下がってしまったとしても、成長ストーリーやPERなどから見れば割安感が感じられます。新聞やテレビのニュースで気になる銘柄に関連するものを見つけたら、過去の推移を確認して、いまPERが上がっている・下がっている理由を考えながら割安・割高を考えてみましょう。

本記事は、PERを解説するものであり、素材として取り上げた企業への投資を推奨するものではありません。原則として原稿作成時点における情報に基づいて作成しております。また、記載された価格、数値等は、過去の実績値、概算値あるいは将来の予測値であり、実際とは異なる場合があります。投資に関する最終決定はお客様ご自身の判断でなさるようお願いいたします。