株式投資を始めるなら、「会社四季報」を読んでおいたほうがいいと言われるのは、すべての上場企業のさまざまな情報をたった1冊でチェックできるからです。もっとも、情報がギッシリと詰まっているだけに、どこからどのように見ていけばいいのか、なかなかピンとこない人も少なくないのでは? そこで、「会社四季報」活用の達人として有名な渡部清二さんに、簡単に読みこなすためのワザをバッチリ教わりました。誰でも気軽に実践できるので、みなさんもぜひ試してみてください!
「会社四季報」には3つの強みがある
私は「会社四季報」を通読してもう20年余りになりますから、何でも聞いてください。毎号、表紙から編集後記に至るまでの2000ページを20時間程度で読破していますね。もちろん、斜め読みとか、数字やコメントだけのチェックとかではなく、隅から隅まで目を通して読み込んでいますよ。突然ですが問題です。どうして株式投資をするなら、「会社四季報」をチェックしておいた方がいいのでしょうか?
わかりました! 結論から言いましょう。なぜ、株式投資に「会社四季報」が欠かせないのか? それは、3つの強みがあるからです。
「会社四季報」の3つの強みとは、①継続性、②網羅性、③先見性です。
まず、「会社四季報」は1936年6月号が創刊号で2016年夏号において80周年を迎えています。継続的に読んでいけば、個別企業の歴史を知ることができるわけです。そして、歴史を知れば、今の状況もきちんと理解でき、未来の姿も想像がつくようになります。
四季報を読めば、世界経済がわかる
それから、2000ページにも達しているように、「会社四季報」はすべての上場企業の情報が詰まっています。世界的に見ても、自国市場の全上場企業を1冊で網羅している本は、「会社四季報」がオンリーワンの存在だと言えます。かつては存在したライバル誌は休刊となって、間違いなく唯一の存在です。
個々の企業の営みは、いわばミクロな経済活動です。その状況を個別に観察して情報を自分の中で積み上げていくことは、マクロ(経済全体の動き)を知ることにもつながります。したがって、「会社四季報」を丹念に読み込んでいくうちに、日本経済や世界経済の情勢もつかめてくるわけです。
残る3つ目、これも意外と見過ごされているポイントですよ。今でこそ上場企業が四半期ごとに決算を発表するのは常識となっていますが、義務づけられるようになったのは2003年からです。「会社四季報」はその70年近く前から、年4回のペースで発行されています。つまり、これから先の未来も先見するポテンシャルを秘めているということです。
「会社四季報」創刊号の巻頭に掲載された「本書発刊に就て」のメッセージをわかりやすく要約すると、以下のようになります。
・日々刻々の企業の息吹を知ることが必要
・そのためには年1回の発行では不十分で、3ヵ月ごとに刊行する本書を創刊した
・「ますます便利に!」というのが刊行者の願い
・読者の要望を反映し、協同編集のもとに改善していくのが望ましい
魔法のアルファベット「ABEJN」とは!?
最後に、「会社四季報」を読み込んでいくプロセスを伝授しましょう。まずはページをめくりながら、肩に力を入れずに読んでいってください。すでにご存じの会社はもちろん、初めてその社名を目にするような会社のページもざっくりと眺めてみてください。「へぇ、こんな会社がこういったビジネスをやっているのか!」と気づくことが大事なのです。こうして、1社でも多くの上場企業の存在を知っていくことが投資家としての財産となっていきます。とにかく、肩に力を入れて丸暗記に挑んだりせずに、自分自身の興味に任せて、自然体で個別企業のことを知っていくことが大事です。
続いて、個々の企業の過去の活動や業績、それらに関連する話題などをチェックしていきます。そうすることで個別企業のおおよその歴史を把握でき、なぜ今の状況に至っているのかを推察できます。
大丈夫! 必要最低限、「ABEJN」をチェックするだけでも十分に個々の会社のことを把握できるようになります。「ABEJN」とは何かについては、次回に詳しく説明することにしましょう!
・「会社四季報」の強みは、①継続性、②網羅性、③先見性
・「会社四季報」を読み込めば、個別企業の未来や日本経済、世界経済の情勢がわかる
・パラパラとめくってから、「ABEJN」に注目するだけで、簡単に読みこなせる!