30代にして本格的に着手した株式投資で成功を収めた立川一さん。成功のキーワードとなったのは、リーマン・ショック時の「株価がいくらになろうが、事業がちゃんとしていれば配当がもらえる」という気付きでした。それ以来、配当重視のスタイルへと転換した立川さんですが、どんな視点で銘柄を選んでいるのでしょうか。
30代からの2億円~会社員投資家・立川一さんインタビュー【前編】を読む
「高配当銘柄を買うわけではない」
会社員でありながら年300万円以上の配当を受け取る立川一さん。それだけの配当を受け取れるということは、配当利回りの高い銘柄を中心にポートフォリオを組んでいるはず――。
「今の資産が2億円弱、配当が年300万円ほどですから、ポートフォリオ全体の配当利回りは1.5%程度しかありません。決して高いわけではないですよね。『高配当銘柄を買う』のではなく、『増配が続きそうな銘柄を買う』ようにしているためです。配当利回りが4%の銘柄は一見魅力的ですが、将来が悲観されて株価が下がり、結果的に高利回りになっている可能性も高いのです」
配当利回りが2%の銘柄は一見魅力は低い。でも年20%ずつ配当が増えていけば4年後には4%を超える。
「しかも増配が続くような銘柄であれば株価が上がる可能性も高いわけです」
立川さんの重視するキーワードは「増配」だ。会社が増配する条件は、ざっくり言えば2つ。利益が伸びるか、「配当性向」(利益からどのくらいを配当にまわすかの比率)が高まるか、だ。
連続増配の銘柄は割高の可能性も

「配当性向が80%の会社だと、それ以上に配当性向が高まることは望みにくく、あとは利益が伸びることでしか増配が期待できない。しかし、利益を伸ばしている成長企業が、まだ配当性向が低い場合は、今後の増配が期待できるのです」
増配に注目するのは、立川さんだけではない。増配に着目し有望な銘柄を探すヒントとして「○期連続増配」といったキーワードを頼りにするやり方もある。実際、米国には50年以上増配をしている会社も存在し、日本では「 花王 」の28期連続増配が最高で、増配株投資なら米国株が有利に見える。
「花王は2017年12月期まで28期連続増配を続けています。ただ、連続増配銘柄はそれだけで投資家の注目を集め、株価も割高な傾向にあります。配当の推移を長い目で見て、『減配の年もあるけど全体としては増えているな』という会社に割安な株価がついていれば投資対象として理想的です」
「東証1部指定記念」の配当で増配が途切れた会社
増配を続けているけれど、途中で増配しなかった年もあるから記録にはならない、なんて会社がそれだ。それなら「連続増配」で調べる投資家の網から漏れるので注目されづらく、株価が割安に放置されている可能性もある。
「私のポートフォリオだと『 ステップ 』という会社がそうですね。『記念配』の出た年があったため、翌年は増配とならず、記録が途切れました」
記念配当は「創業○周年」など会社の節目を記念して出される配当。一時的な増配だから翌年は減配となる可能性がある。ステップは2013年に『東証1部指定記念』の配当を出したため、連続増配の記録が更新できなかった。
「私からしたら非常にありがたいことなんです。記録が途切れれば注目度が下がりますし、長期的に見て成長し増配傾向にあればよいのですから」
連続増配であれば機械的に探すこともできるが、『減配の年もあるけど全体としては増えている』ような会社を探すのはけっこう厄介そう。どうやって探すのだろうか。

「個人投資家のブログで読んだり、誰かから聞いて知った銘柄を調べていくこともあります。『 シーティーエス 』や『 情報企画 』、『 平山ホールディングス 』などは誰かにヒントをもらって調べた上でポートフォリオに加えた銘柄ですね。ただ10年、20年といった長期的な配当の推移を見るには決算短信や有報(有価証券報告書)を何年分もひっくり返すしかありませんので、私の投資銘柄は探すのに時間がかかっているケースが多いです」
業績や配当に変化がなければ保有し続ける
このやり方で銘柄探しをするとなると、地道な作業を厭わず行なうマメさが必要だ。でも立川さんは会社員。投資に費やせる時間には限りがあるので、年に数銘柄ピックアップして少しずつ買付ける。かつ、売買回数も月に数回程度と少なめだ。取引のタイミングはどう考えているのだろうか。
「じつはあまり深く考えてはいないんです。買ってみたら下がってしまったなんてこともありますが、そこまで気にしません。売るときも同様です。買うときは業績や配当に着目しているわけですから、そこに大きな変化がないかぎりは持っていることがほとんどです」
「先日も――」と立川さんは続ける。

「持っていたシーティーエスがPER50倍の割高な状態まで買われていました。『そろそろ売ってもいいのか』とも思いましたが、決算書を見ると売上や利益は変わらず伸びている。それならもう少し持とう、と」
業績が伸びていれば増配の可能性も高い。それなら売る必要もないというスタンスだ。配当狙いであれば日々の値動きに一喜一憂することもない、ということか。
「いやいや、そんなことはないですよ。今日だって、朝から300万円くらい評価益が減りましたからね。私の年収なんて数百万円ですから、その半分が1日で消えるというのは気になりますよ。でも、それを考えすぎてしまうと、自分が今、めざしている『配当を伸ばしていく投資』と合わなくなってくる。今のところは、持って持って我慢するほうがうまくいっているんです。短期的な値動きに動揺して取引すると、だいたい裏目です(笑)」
お金を増やす投資、お金を使う音楽
今も会社員として働く立川さん。年300万円の配当があれば、「セミリタイア」の言葉がちらつきそうだが。
「スタートしたときは『働かなくても暮らせるくらいに儲かったらいいなぁ』と思っていました。皆さんも一緒ですよね。それに最近は、自分の時間がほしいとも思い始めています。だからもう何年かして運用成績が今よりも安定してきたら、セミリタイアを考えてもいいのかなと。明日、あさっての話ではないですけれどね」
立川さんが株式投資の世界に引きこんだのは演奏会だった。今、立川さんが望むのは音楽に費やす時間の確保だ。

「投資とは正反対の世界ですけどね。音楽は『お金を増やす』のではなく,『お金を使う』ほうの話ですから。私が演奏するのはドラム。音楽の知り合いと話していると、投資の世界からは考えられないような浪費家が多く、何万何十万の楽器をポンポン買っていきますよ。私は投資家らしく、楽器を目的と使用頻度を考慮してリーズナブルな楽器を長く使うようにしていますが、こういう感覚の人はわずかです」
長期的な視野で業績の成長と、それにともなう増配に期待しながら配当をもらっていく立川さん、会社員には理想的なスタイルともいえそうだ。