前回の記事では、投資初心者に最初にオススメしたい指標はPER(=株価÷1株あたり利益)であり、企業の成長性などを考慮しながら投資することが大切だということをお伝えしました。ただ、投資を成功させるには、「売り」のルール化こそ成功の秘訣とも言えます。そこで今回は「買い方」よりも難しいと言われる「売り方」について、アンケートをもとに見ていきたいと思います。
第4回「証券社員200人が選ぶ、投資初心者が覚えるべき唯一の指標とは?」を読む
証券社員ですら6人に1人しか設定できていない
いくら有望な銘柄を見つけることができても、利益があるうちに売却をしたり、大きな損を防ぐ手だてがなければ、投資に成功したとは言えません。ところが、実際にきちんと自分の「売り方」を決めている人は少ないのが現状です。証券社員200人に対するアンケートでも、売りのマイルールを設定している人は6人に1人という割合でした。
ルール設定は己に克つため
株価が狙い通りに上昇した状態で利益確定をするのは比較的ラクにできます。一方で、含み損を抱えた状態で株を売ることは、損失を確定することになり、人間の性質上とても難しいと言われています。これは行動経済学でいう「損失回避バイアス」によるもので、利得の喜びより損失の悲しみのほうが大きく感じるという特性が要因となっています。
大公開! 証券社員の「売り」のマイルール
こうした人間の特性に打ち克ち、うまく投資成果を上げるために有効な方法1つが「売り」ルールの設定です。アンケートで売りのマイルールについて質問したところ、大きく分けて5つに分類することができました。なかでも、初心者にオススメなのは【パーセント系】です。自分が買った株価や、直近の高値などを基準に手元の電卓ですぐ計算できて把握しやすいからです。
・高値から30%下落したら(40代以上・本社スタッフ)
・買ったときから倍になったら売る(20代・営業社員)
・10%以上の上昇もしくは下落をした時(20代・営業社員)
・株価の値動きが、購入時の想定から大きく逸脱した場合に損切りを行う。損切りの基準は、移動平均線などの支持水準を下回るか、短期的な下落モメンタム(相場の勢い)の大きさ、そのポジションが許容できる最大損失額の大きさなどから総合的に判断する(20代・本社スタッフ)
・長期、短期ともに価格が2標準偏差(σ)を超えたとき(40代以上・本社スタッフ)
※2標準偏差(σ)とは、統計上、確率的に95%の範囲に収まる値のこと
・成長を続けられる理由が崩れたとき(30代・営業社員)
・基本的に売りませんが、会社が経営の大きな方向転換をしてしまった場合等(40代以上・本社スタッフ)
・購入時に決めたチャート分析上の節目を上回ったり、下回ったら(40代以上・本社スタッフ)
・売買代金の急増を伴って株価のトレンドが変化した場合は売却。同業他社株等と株価水準を比較しながらトレンドの基調が崩れなければホールド(継続保有)。国際的に見たバリュエーションやTOPIX(東証株価指数)ベースで割高感がでてきたら、少しずつ売っていく(一度に全部は売らない)(40代以上・本社スタッフ)
・複数回、チャートが高値をつけたら(40代以上・営業社員)
・株価のブレ幅を見て、目標株価を決めて売る(20代・営業社員)
・目標PERに近づいたら売却。PER見通しが外れても売り(40代以上・本社スタッフ)
売りのマイルールを持っておこう!
アンケート結果からもわかるように「売り」のマイルールは人それぞれです。 また銘柄によっても株価のブレ幅が異なったりしますので、過去の株価などを見ながら考えることが必要です。ただ、共通しているのは、「売り」のルールを購入前に決めているということ。また、大幅な損失を防ぐには、株価の”節目”や”異常値”をしっかりと把握しておくことが重要であると言えそうです。
これだ! と納得のいくルールはなかなか見つからないかもしれませんが、ぜひ「売り」のマイルールを設定して、それを実行してみてください。迷うようなら、先ほど挙げたルールの中で自分が実践できそうなものを選んで、まずはトライしてみましょう!
・「買い方」と同じくらい「売り方」を考えることは重要
・初心者にオススメな「売り」のルールは、【パーセント系】
・株価の節目や異常値をとらえることができる「売り」のマイルールを見つけよう